
正式な武魂
統治の形を変えるというのは、斬新な印象がある。
だから、国民の期待感も高いのかもしれない。
道州制のメリットとしては主に、・東京一極集中の是正と繁栄の拠点の多極化、・二重行政の解消などによる行財政改革の実現、・広域ブロックを単位とした経済文化圏の確立、・国家戦略や危機管理に強い中央政府の確立、などが言われている。
しかし、道州制になれば、自助努力で解決するのが基本となる。
国による財政支援もないと考えるべきだ。
経済的にも、社会的にも、独立した地域としてやっていけるだけの仕組みを工夫できるのかが勝負だ。
欧州や米国が採用する連邦制は、長い歴史と経験を経て、立法から裁判まで地域ごとに独自の制度ができあがっているが、そうした歴史は日本にはない。
いきなり全国一律に道州制を導入したら、違和感がある人も多いのではないか。
国民の理解を得るためには、現行の制度の中で分権の経験を重ねていき、地城によって制度が違うやり方もある、ということを肌で経験する時間が必要だ。
道州制について、「三つの課題」がある。
まず、道州制が実現したら、強大な権限をもった「州知事」が出現する。
仮に、石原都知事の5倍くらい強い州知事が現れたら、これに対して民主的な統制を利かせることができるのか。
歴史的に見ると、道州制はかつて、国が地方を「分散統治」する手段として提案された。
1957年の第4次地方制度調査会の答申だ。
選挙で選ぶ公選制ではなく、総理大臣が任命する「地方長」をトップに置いた。
地方が強くなっては困る、という国の意識が背景にあった。
そうした道州制は、今の時代では否定されている。
州知事は選挙で選ばれることになり、民主的な正統性を持っているが、問題は、誰がこの権力を統制するのかということだ。
一義的には議会だが、今の都道府県知事でさえ十分にコントロールが利いていない。
米国大統領のように、法律で任期制限を設けるという意見が強まるだろう。
二つめに、経済界の人たちが求めてきた道州制は、スケールメリットの追求に主眼が書道州制年表あり、グローバル化時代の経済活動の単位として細かく分かれている都道府県には合わないということだった。
すなわちその主張の多くは、都道府県合併で実現できることだ。
しかも、ある州知事が原子力発電を廃止するという決定をし、中央の統制が利かないような事態になると、経済界にとっては深刻な事態になる。
経済人の本音は、行政の単位は大きくしてほしいけれど、一方で、かなり強い中央統制を期待している、というあたりではないか。
道州制はそういう期待にはつながらない、ということを認識しておく必要がある。
ここで大事なことは、何を国の仕事として残し、何を造州の仕事として移すのかという役割分担である。
三つめは、中央府省側の論理として、出先機関を温存したいという思惑がある。
「分権型道州制」についても、出先機関を残すためには、あらゆる抵抗も辞さないだろう。
しかし、それに屈しては中央統治の芽を残すことになる。
道州制の目的として、「二重行政を撤廃する」ことが重要であり、出先機関が生き残っては意味がない。
きちんと整理縮小しなければならない。
民主党が公務員の労働組合に寄り添うような姿勢のままだと、本当に分権型の道州制につながるのかどうか心配だ。
民主主義強化の仕組みか、統治の道具か政府で道州制を議論したのは、第4次地方制度調査会と第27~28次にかけての同調査会で、いずれも有識者の議論だった。
道州制を主張する政治家たちは多いが、内閣として取り上げたのが安倍晋三元首相で、初めて道州制担当相を置いた。
安倍元首相は「戦後レジーム」の脱却を掲げ、国の形と統治の姿にこだわっていたことも背景にあろう。
安倍内閣で設けられた道州制ビジョン懇談会は、今後議論する上での課題を整理した内容の中間報告書をまとめたが、次の福田康夫内閣は生活者起点を掲げ、国民生活のレベルを上げていくことに政策の重点を置いたので、国の形を問う議論は後景に退いた。
道州制ビジョン懇談会の議論は、経済合理性の追求や行政改革が中心となり、逆に、欠けていたのは、デモクラシーをどうやって強くしていくのか、地域の姿をどうしていくのか、という考え方だった。
「地域主権型道州制」とは言うものの、「地域主権」をどう掘り下げていくか、の議論もなかった。
結局、道州制ビジョン懇談会は、政権交代によって活動を停止し、中間報告後の議論をやりかけたままで廃止された。
・道州制3案(南関東の区域では、東京都のみで一つの遠州とすることも考えられる)「大阪都I「関西州」橋本構想は?橋下徹・大阪府知事の「大阪都」構想が話題だ。
大阪都をステップに関西州の実現につなげる狙いらしい。
「大阪都」は、東京都のような財政力の大きい強力な自治体を作ろうという構想で、橋下知事が作った地域政党「大阪維新の会」は、大阪府と大阪市で大学や図書館などの施設を統合すれば、約7000億円の経費節約になるという。
東京23区のような特別区ができれば、区ごとに公選の区長と区議会ができて、自治的な機能は拡大することになる。
なかなかダイナミックな設計図で、「東京に対抗して」という意気込みに、住民は「観客」としての関心が高いようだが、「暮らしにとって何かいいことがあるのか?」と開かれれば、答えは難しい。
固定資産税をはじめとする税収をめぐり、府と市がぶんどり合戦をしているだけなのか、住民自治をどう拡大するのかの議論はあまり聞こえてこない。
「大阪都」構想を実現するためには、特別法の制定と住民投票による賛同が必要で、ハードルが高い。
住民への懇切丁寧な説明が不可欠である。
思惑はバラパラ道州制をめぐる議論は、「大阪都」「関西州」に似たものがある。
話題の構えが大きく、「国のかたち」につながる議論にはなるが、住民にどんな利益があるか、は置き去りにされがちだ。
安倍政権では、分権推進という文脈よりも、憲法改正は9条だけでなく、中央省庁の大再編や国と地方の関係を変える、という構図で語られることが多かった。
全国知事会でも、道州制では積極・慎重論が二つに割れ、盛り上がる世論を背景に議論はしたものの「基本的な考え方」をまとめるのがやっとだった。
「州都」が予想される県の知事には積極論が多く、小規模の「周辺」県では慎重論が目立った。
国の仕事が大幅に減るならば、現在700人を超える衆参両院議員はどれだけ必要になるのか。
道州議会議員の「立法の権限」はどれだけ拡大するのか。
一極集中の東京に偏在する法人住民税・法人事業税をはじめとする税収を、各道州とどう調整するのか。
「州都をどこにするか」の議論はにぎやかだが、上記のようなテーマはほとんど議論されていない。
そうした状況が、この国の道州制論の真実の姿を浮かび上がらせている。
住民投票の活用が叫ばれながら、民主党政権が条例制定を促進する法案を作る動きは伝わってこない。
法律で一律に決めるのではなく、それぞれの市町村が独自に条例を定めればいいことだが、住民が暮らしのルールを決める権限を拡大することに消極的な議会や首長は少なくない。
国家として最低限のルール、枠組みづくりを求める声は強い。
全国各地の住民投票を支援する団体「国民投票/住民投票情報室」(代表・福嶋清彦前我孫子市長)の公開討論会が、2010年4月に東京で開かれた。
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